夫婦再生の物語– category –
-
第1編 熟年夫婦、節子と昭夫
Episode 001-03:指先が覚えている質感 ― 深夜の探索、未知への扉 ―
深夜二時。リビングに置かれた振り子時計の、規則正しい刻み音だけが静寂を支配していた。 隣の寝室からは、節子の安らかな寝息が聞こえてくる。それは長年、家族という船を沈ませぬよう、共に嵐を乗り越えてきた戦友の吐息でもあった。その音を聴くたび... -
第1編 熟年夫婦、節子と昭夫
Episode 001-02:戸籍窓口の残光 ― 無機質な場所での、異質な予感 ―
豪華客船での夢のような航海を終え、横浜港に降り立ったとき、昭夫を待っていたのは潮風の余韻ではなく、アスファルトの照り返しと、逃れようのない「日常」の重みだった。 数日後、昭夫は一人、区役所の戸籍住民課にいた。 天井で回る換気扇の低い唸... -
第1編 熟年夫婦、節子と昭夫
Episode 001-01:灰色の水平線 ― 役割の終わり、熱の行方 ―
三十年の月日は、あまりにも重く、そして静かだった。 昭夫は、豪華客船『飛鳥II』のスイートルームで、風呂上がりのトランクス姿のまま、ベランダへ続く重厚なガラス戸を開けた。 定年を迎え、ローンを完済し、子供たちを社会へと送り出した。土の時... -
第1編 熟年夫婦、節子と昭夫
Episode 001 はじまり|風の時代を歩む「夫婦の調和」
1. 「土の時代を走り抜けたあなたへ。これからは、ふたりで風を纏い(まとい)ませんか。」 三十年の住宅ローン、子育て、そして守るべき家族という形。 重い荷物を背負い続けた『土の時代』が終わり、ふと気づけば、心には穏やかすぎる凪の海が広がってい...
12